[ 新しき俳句に触れし十二月 ]
[大森理恵先生の御選評]
早や師走!今夏、作者も体調がすぐれず、私も京都は60日を越す連日の熱帯夜と日々の極暑の為に熱中症にかかり二人ともダウンしてしまいました。
それから、今まで九月、十月、十一月は、私が心から信頼する愛弟子さんとのレッスンがなくて、とても寂しかったです。
が、昨日のレッスンではいきなりの挨拶句から始まり、大特選句もあり、驚きました。まるで スランプがなかったように感性の鋭い作者の句には驚きました。️
榮子さんは格調が高く品格のある句を作られる稀有な作家さんの一人です。
今回も、三ヶ月ほど空いてましたが、それを感じない素敵な作品の数々でした。
『新しき俳句に触れし』は独特の謙虚さが出ていて、それでいて、今回は心を新たに再度、俳句に挑戦されようとする、とても高い『志』が含まれている素晴らしい前向きなご挨拶句です。勿論、特選句に頂きました。
梟さん二羽の番いが、とてもNICEな画像ですね。
︎今夜から日曜日にかけては最低温度が0度〜1度という、真冬の寒さです。が5日には今年、最後のスーパームーンの冬満月が見れます。因みにこれを『コールドムーン』と呼ぶそうです。 【冴ゆる月】を仰ぎながら、榮子さんの体調が少しでも和らぎますようにお月さまに祈願致します。
[ 友の句の心に沁みて冬あたたか ]
[大森理恵先生の御選評]
急に寒い師走の朝でしたね。
榮子さんの返句は句友の真理子さんの【冬青空おかえりなさいと友に言ふ】に対してのお返しのご挨拶句です。
これを作者も書いておられますように『返句』と言います。【友の句の心に沁みて冬あたたか】季語の『冬あたたか』が抜群に効いておりますね。このような、挨拶句を即吟で作られる作者には感心致しました。
勿論、この御作品も季語が抜群に良いので特選句に頂きます。
[ 冬紅葉ひかり集めて散歩径 ]
[大森理恵先生の御選評]
綺麗な紅葉の御作品ですね。中でも『光集めて』の措辞が素晴らしいです。この語彙により、一層、紅葉の艶やかな様子が目に見えてまいります。
句歴三年とは思えない、慣れた日本語の使い方には驚きました。
ここ二、三日前から寒さが急激に来ましたが夜中の『冴ゆる月』のスーパームーンは最高でした。『ブルームーン』とも言いますが、凛とした空気の中で一際、艶やかな紅葉を照らす『冴ゆる月』は見応えがありました。
冬は、空気が澄んでいて凛とした大自然、特に、冬紅葉はお見事ですね。
これも特選句に頂きました。
[ はつ冬や青きは鳥の羽の色 ]
[大森理恵先生の御選評]
過日のレッスンの中でも多くの特選句がありましたが、唯一の大特選の一句でした!!!
これは、やはり野鳥の重鎮さんの榮子さんでなければ出来ない一句です。
先程、この鳥を『ルリタキビ』と教えて頂きました。『幸せの青い鳥』とも言うそうです。美しいですね。
夏には富士山などの高山地帯に住み、はつ冬になると都市の公園などに姿を見せてくれると教わりました。
このルリタキビの綺麗な羽の事を一句に仕立てられたのは、さすが、榮子さんと初見では凄く驚きました。このような作品はやはり作者の独断場ですね。季語の『はつ冬』と措辞の『青きは鳥の羽の色』が美しくマッチングしていて、とても魅力的な大特選句です。
[ ふくろふの瞬きひとつ夢の中 ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品は榮子さんらしく透明感があり、梟の可愛さを見事に詠んでおられます。
梟🟰冬の季語なのですが、この『ふくろふ』の瞬きが夢の中に出て来ると言う鳥さん達が大好きな、作者の自己投影句になっていますね。
また、♬リズムも素敵です。難しい言葉は一つもないのに、五・七・五の中に全てを含んだ素晴らしい一句。
思わず特選句に頂きました
[ 花八手白さ際立つ夕まぐれ ]
[大森理恵先生の御選評]
この作品の良さは八手の花の白さと夕まぐれ🟰オレンジ色のお空との対比にあります。
作者は、夕方のお散歩に行かれて白い花八手の花に見惚れておられました。オレンジの空を背景に花八手の白さが際立ってたという意味の一句です。
五・七・五の短い語彙の中で作者の発想の豊かさや発見がある句を見つけて私は選句をします。『選句』と言うのは作者の良いとこ、長所を見つけ出すことから始まります。
作者の一歩は、現在、我々の100歩といっても過言ではありません。その、辛くて一歩の痛みの中での、一つの発見は大きいです。
この色の対比を見つけられた作者の細かい心の機微に特選句とさせて頂きました
[ 夫の手のぬくもりありて冴ゆる月 ]
[大森理恵先生の御選評]
原句は季語の『月冴ゆる』をそのまま、使われています。これでも良いのですが、やはり俳句は五・七・五の短詩系です。なのでリズムを整える為に、下五に【冴ゆる月】と、絵画のように添削させて頂きました。
『冴ゆる』🟰冬の季語です。(作者の措辞の『夫の手のぬくもりありて』に続くのであれば余計に『冴ゆる月』として名詞の『月』をラストに置いて一句をダイナミックに大きくしました。)
此処は作者が初心者であれば直しませんでしたが、やはり元々、格調高い作家さんですから敢えて添削しました。元々の原句も、とても、とても良い発想です。御主人さまの『手の温もり』と
『冴ゆる月』とのバランスが、絶妙な特選句です
[ 涙落つ石蕗の花折れてをり ]
[大森理恵先生の御選評]
俳句は基本、名詞で勝負します。というのも、副詞や形容詞を使いますと説明句になりがちなのと、一人よがりの、作品になるからです。
此処は凄く難しいのですが、俳句用語に世阿弥の書かれた『風姿花伝』より、『離見の見リケンノケン』と言う言葉があります。これは、演目を演じる役者が、もう一人の自分として客席から、自分の演技を見るという意味です。要するに客観的に物事を見る、それには自分の感情を言わずに物事を具象的に捉えなければ、いけないというルールです。
こう言う風に書いてご説明すると難しいのですがこれは全て慣れです!!!今回も原句は悪くないのですが、『静かなり』と作者の想いを、言うことにより句柄が小さくなります。そこで、上五の『涙落つ』を、引き立たせるには具象的に『折れてをり』と添削させて頂きました。作者の悲しみをより、深く求めて・・・難しい文章になりましたが、作者の意図は、こう言う事なのです。
榮子さんは人一倍、謙虚で努力の方です。普通であれば、自分の良い句のみを、出されるのですが、、、やはり、こうした弱点を曝け出して、より、一層基礎から学ぼうとされる凛とした、お姿に感動した一句です
[ 冬の雁一文字描く筑波山 ]
[大森理恵先生の御選評]
下五の固有名詞の『筑波山』が効いてますねぇ〜。また、上五の季語〜中七迄の措辞『冬の雁一文字描く』までも、榮子さんだからこその言い回しに惚れ惚れいたしました。やはり、この作者は格調の高い品格のある作品を作られたら天下一品です。冬の雁の様子をダイナミックな『筑波山』で止められたのは実にお見事です。初見から特選句に頂きました。
[ 義士の日や真青なる波穏やかに ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日は榮子さんのレッスンの日でした。10句共、格調の高い作品ばかりでした。が榮子さんは既に三年以上のレッスンや句会を習得されて初心者ではなく、中級者になります。
今回の添削は非常に難しいと存じます。何故ならば、原句は説明句と言い、措辞の、【真青なる波穏やかに】が季語の【冬の海】の説明をしています。特に海と波は付き過ぎと言い、五・七・五しか使えない短詩系の、俳句では勿体ない語彙となります。何故【義士の日】12月14日【討ち入りの日】に添削したのかと申し上げますと、IQの高い御本人なので次のステージを要求されていると思いました。
季語と措辞が説明句にならずに意外性を持ってくることです!!!彼女の選句眼は、凄いです。それと、原句が、平凡である事にも、気が付いておられました。いよいよ、次のステップへの段階への脱皮の時が来たーーー‼と決意しました。なので此処は思いきって初めての試みで【二句一章】という高度なテクニックを使いました。此の作句の手法は全国の、俳人でも、多分なかなか理解出来る方法ではございません。6歳から俳句一筋に研究して67年の句歴を持って俳句にオールインした私が編み出し到達した、独特のオリジナルの勉学の賜物です。同じような句に戦後50年の原爆の日に作句した【背泳ぎに空を見てゐる原爆忌】が歳時記の代表句としてあります。この、方法を使いました。
今は御本人も理解し難く、わかっておられないかもしれません・・・★1702年12月14日、大石蔵之介達赤穂の浪士47人の志士達が日本中を一年間騙して君主である浅野内匠頭の『松の廊下』での出来事へのリベンジ!!!その浅野内匠頭を切腹に貶めた赤尾浪士の敵となる吉良上野介の首を取った日本の有名な歴史的な実話は何度も何度も歌舞伎や映画にもなっています★なので大きな季語が【義士の日】なのです。が、それは323年前の、日本の、江戸時代のこと。現代では、その日が、原句の措辞である『真青なる波穏やかに』のように何もなく平凡な日であったことの象徴として難解な季語を、お勉強の為に使ってみました。
俳句は日本が誇る深い深い文藝です。語り継ぐ日本の歴史も非常に大切です。【忌日季語】への生まれて始めての挑戦でしたが、、、、今は理解されなくてもEQ &IQの、高い作者には、いつか、私が居なくなってもと言う気持ちから高度な添削を、試みさせて頂きました。
[ 赤き脚そろへて立つや都鳥 ]
[大森理恵先生の御選評]
昨日は、かなり高度なレベルアップした選評を書いたので御本人も読者の方々もアタフタと惑われたかもしれません。あの季語は【二句一章】にするならば【石蕗や(ツワブキや)真青なる波穏やかに】としても石蕗の花の黄色と海の青の対比で良かったのかもしれませんが・・・私は作者には、なるべく高度な指導をしたかったので難解なそして、12月14日レッスン日の季語をジャストに使いました。御本人及び読者の皆さまには理解し難いであろうと思いましたがその件は選評で詳しく書いたつもりです。然し、まだまだ何故???とご納得いかれないのは百も承知でしたが、、、誠に申し訳ございませんでした。
︎さて今日の一句は鳥の重鎮さんの作者であれば、お手のものですね。こう言う詠み方を【一句一章】と言います。
【一句一章】は、ややもすると物事の説明句になり易いのですが、今回の御作品は中七の『そろへて立つや』にポイントがUPされます。此処は流石にじっくりと良くご覧になられて感動致しました。そしてリズム♬も良いですね。都鳥の寒い中での赤い脚を揃えて立つ可愛い姿が、とても素晴らしいと思いました。特選句です
[ 水仙や越前岬に思ひ馳せ ]
[大森理恵先生の御選評]
この一句は、まさに!まさに!と共感させて頂きました。私も『水仙』と言う語彙には、必ず、日本海の『越前岬』が出てまいります。それほど、全国的に水仙🟰越前岬という地名は、有名です。
京都から福井の越前岬は車で何とか吟行へ行けます。が作者のお住まいの千葉からだと、かなりの距離。けれど作者は『鳥見』で全国、いや世界中のあちこちを旅されておりますから吟行スポットはお手の物です。
【水仙や】で切って、あとの措辞がとても抒情があり良いですね。これも、品格がある一句。特選句に頂きました。
[ 枯れ尾花ひかり放つや手賀の丘 ]
[大森理恵先生の御選評]
作者の下五の、地名は『テガノオカ』と読みます。
この一句も格調が高いですね。今日が雨なので中七の『ひかり放つや』が鮮明に蘇りませんが晴天ならば、季語の『枯尾花』に光が当たると煌々として素敵な光景ですね。
然も『手賀の丘』という固有名詞を限定されていますので手賀沼周辺の小鳥さんや水鳥さん達も、風景の中に入ってきます。
一句の句柄のスケールが、大きな特選句です。
因みに明日は冬至です。0.03分に冬至に入りますがこの日を『一陽来復』とも言います。悪い年が明けて良い年になる事を大自然に心から感謝すると平和への願いが叶います。隠から陽に変換する点、明日の0.03分を冬至点と言います。
[ 散歩径赤き実のある聖歌かな ]
[大森理恵先生の御選評]
原句でも悪くはないのですが、『十二月』と言いますと凄くアバウトな季語になります。なので、今、あちこちから流れてくるクリスマスソング♬→『聖歌』を使い、切れ字の『かな』止めをしました。
赤の色と曲の音を出して一句を立体的に仕上げました。こうする事により五・七・五という数少ない文字数の俳句を感性豊かな仕上がりにします。これは高等な技術ですので普通は俳人のプロでも、なかなか難しいのですが、、、榮子さんのように俳句に熱心な努力家さんにはいつか、理解して頂きたいと思って飛躍した添削をさせて頂きました。
榮子さんは日々の歩行も困難な状況にあるにも関わりませず、このように、俳句を通して皆さまへの発信を続けておられるご立派な生き方をされている女性です。
私の指導方針は【生き方】=【俳句】です。作者からは沢山の鳥さん達の事を教わり、又、そのおかげで 鳥さん達が大好きになりました。
この前の赤い脚で、真っ直ぐに立つ都鳥の素晴らしい御写真も、まだまだ目に焼き付いて離れません。添削は、させて頂きましたが原句が良いからなのです。
クリスマスソングに合わせて赤い実が踊っているような風景は、やはり特選句に頂きます。
