[ 「こー」と鳴き「かっかっ」と返す鶴の恋 ]
[大森理恵先生の御選評]
榮子さんの一句は、お正月にふさわしい『鶴の恋』ですね。「こー」と啼き、「かっかっ」と返す男女の鶴さん達の鳴き声には感心させて頂きました。これこそ、鳥の重鎮さんならこその御作品です!また、ニ羽の鶴さん達の御写真も素敵ですね。これは前回の句会で出た御作品ですが思わず、一番に特選句に選ばせて頂きました。下五の『鶴の恋』が決まっている素晴らしい特選句です。
[ ふくろふや赤き実ひとつ弾けをり ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は年の瀬から新春にかけてとても寒い日々が続く様子です。
さて原句なのですが作者がウッカリされて季語がございません。『赤き実』だけでは季語にはならないのが残念です。けれど『赤き実のはぢけたる』の措辞は素敵で使いたいと思いました。なので榮子さんが最もお好きな【ふくろふ】を冬の季語として切れ字を入れて使い添削させていただきました。 添削句はご自分の作品としてお納めくださいませね。
添削はしましたが『ふくろふ』の【暗】と『赤き実』の【陽】とのバランスのとれた特選句です。
今日の寒気に痛みがあまり酷くなりませんようにお身体を温かくされて今夜の句会、どうぞよろしくお願いいたします。︎
[ 波たかく冬かもめ飛ぶ九十九里 ]
[大森理恵先生の御選評]
昨夜から今朝にかけての京都は一瞬、雪が降り寒い寒い『寒』の朝でした。あらゆる箇所を骨折されている作者も酷い痛みで眠りが浅かったのでは?深く案じております。
さて挙げ句なのですが、原句の『海たかく』では説明句と言って、見たままになります。そこで具象的な『波』とさせて頂きました。俳句は日記ではなくて【一行の詩】です。そこには作者独特の個性や感性を入れることが必要になります。文学と文藝の違いは多少あるかもしれませんが、俳句は日本が世界に誇る唯一季語という他の国にはない歴史のある【文藝】です。所謂、文学+藝術です。
此処まで、とても難しい事を書き込みましたが、普通の俳人さんだと、この句でも◯だと言われるかもしれません。この【波たかく】という具象的な語彙により一句のスケールが一段と大きくなり立体感が出ます。このような添削を【一字違いが大違い】と言います。
作者は既に俳句における大切な『型』ができております。中七に季語の『冬かもめ』を持ってくるのは句歴10年以上の方々しか無理な技法を、いとも簡単にされております。然も、下五の【九十九里】の固有名詞もしっかりと重く効いています。なので、此処は一字のみ、添削させて頂きました。
この添削により映像の復元のあるダイナミックな一句となりました。 ★とても素敵な百合鴎さんの飛翔の御写真ですね★
[ 寒雁のひとこゑ啼きて旅なかば ]
[大森理恵先生の御選評]
季語の『寒雁』の様子が手にとるようにわかるストーリー性のある素敵な作品ですね。これが例え『虚』であっても『実』であっても、それは関係ないです。
中七の『ひとこゑ啼きて』が実にインパクトがあり、そして下五の『旅なかば』の締めの語彙には感動いたしました。読者の想像を膨らませるには充分な格調の高い一句です。
良い俳句は30枚の原稿用紙の物語を書けると言います。榮子さんの句はどの句も季語に対する深い愛があり、読者の我々も穏やかな気持ちになり癒されます。
たった五・七・五の文字数の中で大いに遊んでおられる作者の【生き方】がとても嬉しくなる一句です♪ 地味ではありますが一つも無駄な語彙のない特選句です。
[ 寒雀むかしむかしの物語 ]
[大森理恵先生の御選評]
既に今年も『寒』に入りました。この前のレッスンでは、この素晴らしい、御作品に驚きました。季語の【寒雀】だけでこれだけの中七〜下五にかけての【むかしむかしの物語】と、対等になるなんて…。言葉もありません!!!ともかくリズム良くて句がダイナミックです。
『言葉は平明に想いは深く』季語の偉大さを作者は理解されているのかどうかは別にして・・・(笑)読者は、この季語と措辞から、色々な場面を想像してお話しが膨らみます。︎これこそ、俳句の極み!!!︎この作品は榮子さんの代表句の一句に入る特選句です。
[ 足の痛み腰の痛みや虎落笛 ]
[大森理恵先生の御選評]
季語の『虎落笛』と上五〜中七の『足の痛み腰の痛み』が上手くマッチングしていますね。然も此処でも、作者のお得意な、リフレインを、使っておられます。『虎落笛』は冬の風の中でもピューン、ピューンと音の出る激しくも難しい季語です。
こんな風に作句されて素晴らしいと思いました。さすがは優等生の一句!作者の、全身の痛みがわかるだけに、この【自己投影句】には絶句した特選句です。
[ 冬りんご心にしみて師の教へ ]
[大森理恵先生の御選評]
早や、お正月も三日となりました。此の句は前回の句会に出た作品でした。『心にしみて師の教へ』の措辞は、私こそ身にしみてとても嬉しかったです。
この挨拶句なのですが、作られたのが例え原句の『数へ日』であっても此処は私に関連する季語を持ってきて榮子さんの大好きな歳時記に掲載されている私の一句の【冬りんご海の向かうに海のあり】から季語の【冬りんご】を取り、添削させて頂きました。
師弟はお互いに信頼関係がないと長続きしません。私は榮子さんの、高潔なお人柄が大好きです。そして何よりも努力の方です。EQ&IQが高く、かなり品格の高い、そしてユーモアのある柔軟な心の柔らかい方です。鳥の重鎮さんで世界中、そして日本中、以前はあちこちの貴重な鳥を観察して素晴らしい御写真の数々を撮影されておりました。が、現在、体調を崩されてからは俳句一筋に、前向きに頑張っておられます。日々、おみ足の痛み、腰や背中の痛み、全身の激痛に耐えて、辛い日々を俳句を学び【陰】を【陽】に転換されて過ごされています。その【生き方】こそ、【俳句】です。心よりリスペクトする中西榮子さんは稀有な、お人柄です。
この作者の【生き方】こそ見習うべき、私の大先輩です。榮子さんありがとうございます。こちらこそ中西榮子さんの【生き方】に心より感謝申し上げます。
[ 連雀の啼くや集ふや実のたわわ ]
[大森理恵先生の御選評]
季語は『連雀』この季語を使われて『啼くや集ふや』とリフレインでリズムを、整えるという切れ字を二つ使う一句に仕立てあげました。
まだ、三年生なのに、榮子さんの原句が良いからです。然も下五の『実のたわわ』の締め方が素晴らしいですね。この一句は、添削してリズムも良くて文句のつけどころのない作品となりました。
よく、此処まで、上達されたと驚いています。普通の方では、なかなか難しい、『実のたわわ』の纏め方に感動させて頂きました。添削は致しましたが代表作となる特選句です。
[ 筑波嶺の稜線あおぐ寒さかな ]
[大森理恵先生の御選評]
挙げ句は句会で特選句に頂きました。
俳句の骨格が素晴らしい一句です。
そして季語の下五の【寒さかな】がとても効いています。御本人は俳句を学んで直ぐの頃に「飯田蛇笏の句が好きです。」と仰ってましたように、これを俳句では立て句と申しまして連句の発句となる作品です。
一句としての品格が高くて格調の高いのが特徴です。句柄が大きくて、風景がダイナミックな特選句です。
[ 我もまた背伸びしてみる冬木立 ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は昨夜から雪❄️が降り今朝は、お日様がお顔を出してくれていますが、とても寒いです。雪の金閣寺は凄く綺麗なので、写真家さん達は大勢、集まっておられるでしょう。
さて挙げ句なのですが、レッスンの折に敢えて添削しなかったのは、こういった句を【自己投影句】と言い、自分の事を述べる作句の仕方です。︎作者は現在、おみ足のお加減が悪くて背伸びもままならない状況だと存じます。(数年前に私も前を歩く、見知らぬ、おばあちゃまを庇い大型バイクに当て逃げされた 大事故により、後ろの肋骨5本骨折、そして両膝骨折という災難に遭遇しました。犯人見つからずで、その後半年間の入院費、治療費、全て、今でも自費診療です泣泣泣)お金も散財しまして貯金スツテンテンですがやはり骨折は後遺症が一生残りとてもキツイです。寒くなるとやはり作者の痛みを心から思います。
私は中学、高校と陸上部でした。国体にも出ました。なので、サッカーもしたりと、超超超お転婆な学生時代でしたので何とか、足は大丈夫です。作者は、もっと悲惨な状況で歩行困難の為に自在に歩くことが出来ません。全て御主人様のお優しい御手が彼女の杖なのです。
この季語の【冬木立】が真っ直ぐに並んで立っているのをご覧になられて背伸びしたいのはヒシヒシと わかり、涙が出ました。それにしても【冬木立】をご覧になり【我もまた背伸びしてみる】という措辞は簡単なようでなかなか、出てくる語彙ではありません。作者の心の中には俳句をされてから常にモノや事に対しての鑑賞力が鋭くなりとても感性が良く、見方が、かなり変わりました。嬉しい限りです。
素直な一句で大好きです。特選句に頂きます。
[ 月冴ゆるとほくに聞こゆ波の音]
[ 縁側にかさこそかそと寒すずめ ]
[大森理恵先生の御選評]
今日は『大寒』です。京都はマイナス1度です。さすがに寒い朝ですね。私は昭和の『湯たんぽ』で足を
温めて一人寝です。暖房をかけてないのでなかなか、お布団から出れませんでした。
今回の季語は可愛いい『寒すずめ』原句は上五から中七までは、とても良いです。が下五の『集まれり』では説明句と言いまして、発見がないのです。なので中七の素晴らしい語彙『羽音もせずに』を活かして『恋始む』と発想の転換をさせて頂きました。
作者の作品はいつも格調が高くて品格があります。優等生の作品です。原句が良いと変な垢がついてなくて直ぐに添削して、感性の優れた素敵な作品になります。
【寒すずめ羽音もせずに恋始む】とても素晴らしい、一句になりました。
[ らんらんと寒月冴ゆる恋燃ゆる ]
[大森理恵先生の御選評]
京都は底冷えの寒さです。明日からは又、マイナス➖の温度らしくて…。
さて挙句なのですがレッスンの折、一目見て驚きました。先ず榮子さんが【恋燃ゆる】なんて…私が「型に入って型を、突き抜けて下さいね」と言った言葉の通りの一句でした。
上五の『らんらん』との擬態語の副詞も凄く効いています。これが『きらきら』では説明句になり、ダメなのです。『らんらんと』は英語ではcheerfullyとも言って、元気な語彙となり明るい様子に使います。 この上五の副詞、そして中七の『寒月冴ゆる』下五の『恋燃ゆる』の『る』のリフレインには実にお見事です♪としか言えませんでした。
細かく言いますと『寒』も『冴ゆる』も冬の季語なのですが、それを上回る程の作品には、正直、指導者としまして驚くばかりです。普通であれば、このような良い意味での激しい一句は、なかなか三年生クラスの俳人さんでは無理なのです。
お見事な特選句です。
